【超広角レンズ】SONY FE 16mm F1.8 G：超広角の常識を覆す、小型軽量Gレンズ

はじめに：なぜ今、このレンズに注目すべきなのか？

クリエイターにとって、レンズ選びは表現の幅を大きく左右する重要な要素です。超広角レンズは、広大な風景、迫力ある建築物、そして満天の星空を捉える上で不可欠な存在として認識されてきました。しかし、従来の超広角レンズは、その光学性能を追求するがゆえに大型化し、携行性や動画撮影時の取り回しに課題を抱えることが少なくありませんでした。

ソニーが新たに投入した「FE 16mm F1.8 G」は、この超広角レンズの常識を根本から覆す可能性を秘めた一本として、大きな注目を集めています。開放F値1.8という明るさを持ちながら、驚異的な小型軽量化を実現したこのレンズは、静止画撮影の可能性を広げるだけでなく、Vlogやシネマティック動画など、現代の動画クリエイターが求める新たな表現の地平を切り開くことを目指しています。ソニーは本レンズを「静止画・動画を問わず幅広い撮影シーンでクリエイターの創造力に応える」レンズとして位置付けており 、単なる静止画用ツールに留まらない、マルチメディアコンテンツ制作のための強力なパートナーとなることが期待されます。

FE 16mm F1.8 G　驚きの基本スペックと第一印象

まず、本レンズの基本的な仕様を確認することで、その革新性をより深く理解することができます。以下に主要スペックをまとめました。

項目	仕様
焦点距離	16mm (APS-Cで使用する場合は換算 24mm)
開放F値	F1.8
最小絞り	F22
レンズ構成	12群15枚 (2枚AA非球面、1枚Super ED、3枚ED)
絞り羽根枚数	11枚（円形絞り）
最短撮影距離	0.15m (AF時) / 0.13m (MF時)
最大撮影倍率	0.25倍 (AF時) / 0.3倍 (MF時)
フィルター径	67mm
最大径×長さ	φ73.8mm × 75mm
質量	約304g
手ブレ補正	なし (ボディ側対応)
発売日	2025/04/11
価格	136,400円

「小型・軽量」がもたらす撮影の自由度

このレンズの最も特筆すべき点は、わずか約304gという驚異的な軽さと、最大径73.8mm、長さ75mmという手のひらサイズのコンパクトさです 。この軽さは、単に持ち運びが楽という表面的な利点にとどまりません。

まず、物理的な側面から見ると、長時間の手持ち撮影における腕の疲労を大幅に軽減します。これは、Vlog撮影やイベント撮影など、機動性が求められるシーンで特に大きな意味を持ちます。また、ジンバルに搭載した際のバランス取りが非常に容易になり、ジンバルモーターへの負担も軽減されるため、バッテリー寿命の延長にも貢献します。これは、動画クリエイターにとって撮影の継続性や機材運用の効率性を高める、実用上の大きな利点となります。

どんなに性能が良くても、持ち歩かないレンズに価値はありませんよね。常に本体につけっぱなしにしても、軽くて機動力が高い。そういった意味でも、本レンズは存在意義があります。

Gレンズが魅せる描写性能：細部まで妥協しない高画質

FE 16mm F1.8 Gは、そのコンパクトなボディにGレンズの称号にふさわしい高い描写性能を凝縮しています。

中央の解像度は最高クラス

本レンズは、開放F1.8から画面中央部で非常にシャープですが、F2.2まで若干絞るとさらに描写力を発揮します。F4に絞り込むことで、その解像度はさらに向上し、画面の隅々まで一貫して優れた画質が得られます。

四隅もレビューサイトで言われているより綺麗

α7cII（3300万画素）での撮影例。F1.8であってもかなりシャープに映る。
4Kモニタなら、四隅であっても等倍鑑賞に耐える画質。200％拡大でやっと違いがわかる程度。
ピント位置は中央ではなく、拡大箇所に設定。手持ち撮影のため、多少のズレはお許しいただきたい。

広角レンズで「ボケる」体験：F1.8と11枚羽根が織りなす表現

超広角16mmという焦点距離でありながら、開放F1.8の明るさにより、美しく滑らかなボケ表現が可能である点も、このレンズの大きな特徴です。特に注目すべきは、「卓越した近接性能」です。最短撮影距離0.13m（MF時）、最大撮影倍率0.3倍（MF時）という性能を組み合わせることで、被写体に極限まで近づき、背景を大きくぼかす「広角ボケ」というユニークな表現が実現できます。これは従来の超広角レンズでは難しかった表現であり、被写体にグッと寄ることで、遠近感を強調したダイナミックな構図と、開放F1.8による大きな背景ボケを両立させることが可能になります。

超広角レンズでこれだけのボケが得られること自体が革新的であり、その表現の幅は計り知れません。

光学収差の評価：色収差、歪曲収差、周辺減光の実写影響と補正

光学収差の補正状況も、レンズの描写性能を評価する上で重要です。

• 色収差：軸上色収差、倍率色収差ともに非常に良好に補正されており、実使用において色づきが目立つことはほとんどありません。安価なレンズは収差がきになりますが、このレンズは全くないと言って良いレベル。
• 湾曲：補正なしだと湾曲はありますが、コンパクトさの代償ですね。Lightroomなどの現像アプリで完璧に補正可能です。ここは純正レンズの強みです。
• 周辺減光：F1.8では若干の周辺減光がありますが、これも現像アプリのプロファイルで自動補正可能です。ただ、上の作例のとおり、F1.8では明るさを持ち上げるため、暗所では若干ノイジーです。

クリエイターを支えるAF性能と操作性：静止画も動画も快適に

FE 16mm F1.8 Gは、静止画だけでなく動画撮影においてもクリエイターを強力にサポートする、先進的なAF性能と直感的な操作系を備えています。

XDリニアモーターによる高速・高精度・静粛AF

本レンズは、2基のXD（extreme dynamic）リニアモーターを搭載しています。これにより、高速・高精度・高追随かつ静粛なフォーカス駆動を実現しています。動きのある被写体、例えばVlogでの歩き撮りやストリートスナップなどでも、被写体を確実に捉え、撮りたい瞬間を逃しません。

動画撮影に最適化された機能：ブリージング抑制と手ブレ補正連携

動画クリエイターにとって特に重要なのが、「フォーカスブリージング（画角変動）」の抑制です。本レンズではこれが効果的に抑制されており、ピント移動時の不自然な画角の揺れが大幅に軽減されています。

超広角なのに「寄れる」：新たな表現の可能性を拓く近接性能

FE 16mm F1.8 Gは、その超広角という特性にもかかわらず、驚くべき近接撮影性能を備えています。最短撮影距離はAF時0.15m、MF時0.13m、最大撮影倍率はAF時0.25倍、MF時0.3倍を実現しています 。この性能により、被写体との距離をわずか4cm程度まで接近させることが可能になります 。

通常、超広角レンズは被写界深度が深く、背景をぼかすのが非常に難しいという特性があります。しかし、本レンズはF1.8という明るい開放F値と、この驚異的な近接性能を組み合わせることで、被写体に極限まで近づくことで背景を大きくぼかすことが可能になります。これにより、超広角特有のダイナミックな遠近感を保ちつつ、被写体を際立たせるという、これまでの超広角レンズでは実現が難しかった「広角ボケ」という新しい表現手法が生まれます 。これは、レンズ設計における革新的なアプローチの結果であり、単なるスペックの羅列以上の意味を持ちます。

この「広角ボケ」は、インフルエンサーが他との差別化を図る上で非常に強力な武器となります。例えば、Vlogで自分撮りをする際に背景の情報を広く入れつつも、顔を大きく印象的に見せたり、商品レビューで製品の細部を見せながらも、その場の雰囲気や環境を広く取り込んだりするなど、多様なコンテンツ制作に応用できます。

このレンズで何が撮れる？：おすすめ撮影ジャンルと活用シーン

FE 16mm F1.8 Gは、そのユニークな特性により、幅広い撮影ジャンルと活用シーンでクリエイターの創造力を刺激します。

風景、建築、星空：ダイナミックな表現の追求

超広角16mmの画角は、広大な風景、雄大な建築物、そして満天の星空をダイナミックに捉えるのに最適な画角です 。開放F1.8の明るさは、夜景や星空撮影において、低ISO感度でノイズを抑えつつ、シャッタースピードを稼ぐことを可能にし、手持ちでの夜景撮影の可能性も広げます。
レビューサイトではコマ収差が目立つという触れ込みでしたが、サイトによってはF2.8でほぼ消失するとの情報もあります。まだ星を撮りにいけていないため、後日レビューします。

Vlog、ストリート、ポートレート：新たな視点での活用法

小型軽量設計と優れたAF性能は、Vlog撮影に最適です 。手持ちやジンバルでの運用が非常に快適で、ブリージング抑制機能も動画品質向上に貢献します。ストリートスナップでは、広い画角で場の雰囲気を取り込みつつ、F1.8で被写体を際立たせる表現が可能です。ポートレートでは、超広角特有の遠近感を活かし、被写体と背景を同時に印象的に見せる「環境ポートレート」に挑戦できます。前述の近接性能を活かせば、顔のアップと背景の広がりを両立したユニークな表現も可能です。さらに、「赤ちゃん・子ども」や「花」といったジャンルも、近接性能と組み合わせることで面白い表現が期待できます 。

低照度下での圧倒的な強み

F1.8という明るい開放F値は、暗い室内や夜間撮影において、ISO感度を上げすぎずに手持ち撮影を可能にする大きな強みとなります。これにより、ノイズの少ないクリアな画像を生成し、低照度下での撮影機会を大幅に拡大します。

総評：SONY FE 16mm F1.8 Gは「買い」か？

メリット・デメリットの総括

メリット:

• 超広角F1.8レンズとしては驚異的な小型軽量性
• 開放F1.8からの高い解像性能と優れた光学収差補正（色収差、フレア耐性）
• 2基のXDリニアモーターによる高速・高精度・静粛なAF
• 動画撮影に最適化された機能（ブリージング抑制、ジンバル相性、クリック切り換え絞りリング）
• 超広角レンズとしては異例の優れた近接撮影性能
• 67mmという汎用性の高いフィルター径

デメリット:

• 開放F1.8での周辺減光が目立つ
• 単焦点レンズゆえのズームの不自由さ

どんなクリエイターに特におすすめできるか

FE 16mm F1.8 Gは、以下のクリエイターに特におすすめできるレンズです。

• Vloger / 動画クリエイター: 小型軽量でジンバルとの相性が良く、ブリージング抑制や静粛AFなど動画に特化した機能が満載のため、手軽に高品質な超広角動画を撮影したい人に最適です。
• 風景・建築・星空フォトグラファー: F1.8の明るさと優れた光学性能（特にコマ収差の少なさ、フレア耐性）により、低照度下でのダイナミックな表現を追求したい人に。歪曲補正を許容できるなら、その価値は計り知れません。
• 旅好きフォトグラファー: 約304gという圧倒的な軽さで、荷物を最小限に抑えつつ、広角から近接まで幅広い表現を楽しみたい人に強く推奨します。
• 新たな表現に挑戦したいフォトグラファー: 超広角と近接撮影を組み合わせたユニークなパースペクティブとボケ表現に興味がある人にとって、このレンズはクリエイティブな可能性を大きく広げるでしょう。

まとめと次のステップ

SONY FE 16mm F1.8 Gは、その小型軽量設計の中に、超広角F1.8という明るさ、Gレンズならではの卓越した描写性能、そして動画撮影に最適化された先進機能を高次元で融合させた、まさに「超広角の常識を覆す」レンズです。RAWでの歪曲収差という唯一の大きな課題はあるものの、それを補って余りあるメリットが多数存在し、特に動画クリエイターや機動性を重視するフォトグラファーにとっては、唯一無二の存在となり得ます。

このレンズは、あなたのクリエイティブな可能性をどのように広げるでしょうか？ ぜひ実際にこのレンズを手に取り、その魅力を体験し、あなたのVlogや写真でその「生の声」を視聴者に届けてみてください。