「フォルダを1回クリックしただけなのに、なぜか開いてしまう」 「ドラッグ&ドロップが途中で勝手に解除される」
愛用のトラックボールマウスを使っていて、こんなストレスを感じたことはありませんか?それは故障ではなく、「チャタリング」と呼ばれる現象かもしれません。
私も3年愛用している名機『Logicool M570』がこの症状に見舞われました。昨今の物価高、同等の新品を買おうとすると1万円近くしてしまいます…。
「買い換える前に、ダメ元で直してみよう!」
そう思い立ってDIY修理をしてみたところ、驚くほど簡単に、しかも数百円のコストで完治しました。 今回は、誰でもできる「接点復活剤」を使ったトラックボールの修理方法を、写真付き(※想定)で分かりやすく解説します。
3年使ったトラックボール(M570)の左クリックがおかしい
私が愛用しているのは、ロジクールのロングセラーモデル『M570』。手に馴染む形状で手放せない相棒なのですが、3年経った頃から左クリックの挙動がおかしくなりました。
シングルクリックのつもりがダブルクリック判定になってしまう。 この「意図しないダブルクリック」は、マウス内部のスイッチ接点が酸化や汚れで接触不良を起こす「チャタリング」という典型的な不具合です。
買い替えか、修理か
今の後継機(M575など)をチェックしてみると、円安や物価高の影響で結構なお値段(7,000円〜)になっています。 まだボールの動きはスムーズだし、クリック以外は元気。そこで、「接点復活剤」を使ってスイッチを掃除するだけの簡易修理を試すことにしました。
修理に必要な道具は2つだけ
今回の修理に必要なのは以下の2点です。
- 精密ドライバーセット
- マウスのネジは非常に小さいです。100円ショップのものでも対応可能ですが、持ち手がしっかりしたセットを一つ持っておくと、PC修理やメガネの調整など幅広く使えて便利です。
- 接点復活剤(スプレータイプ)
- 今回の主役。ホームセンターやAmazonで手に入ります(KURE コンタクトスプレーなどが有名)。
手順1:M570を分解する
それでは早速分解していきましょう。 注意: 分解するとメーカー保証の対象外になります。自己責任で行いましょう。
ボールと電池を外す
まずは裏面の穴から指で押し出してトラックボールを外します。電池も必ず抜いておきましょう。
ネジを外す(隠しネジに注意!)
M570のネジは「トルクスネジ」と呼ばれる星型の場合がありますが、多くの場合は精密プラスドライバーで開けられます。 ここで最初の難関があります。ネジが見当たらないのです。
実は、ネジは滑り止めのゴム(ソール)の下に隠れています。
カッターやマイナスドライバーの先を使って、丁寧にゴムを剥がしましょう。後で貼り直すので、粘着力を落とさないようにきれいに剥がして保管しておきます。ゴムの下にある4本のネジを外します。
【最重要】シールの裏の「隠しネジ」
「ネジを全部外したのに開かない!」と焦る人が多いのがここ。 実は、電池ボックス内の製品シールの裏にもう1本、ネジが隠れています。
指でシールの上からなぞると、少し凹んでいる場所があるはずです。そこがネジ穴です。 シールを破るか、綺麗に剥がして、この隠しネジを外してください。これで合計5本のネジが外れました。

手順2:接点復活剤をスイッチに注入する
ネジが外れると、パカッと本体が上下に分かれます。 中には基盤が入っており、左右のクリックボタンに対応する小さな四角い箱(マイクロスイッチ)が見えるはずです。
魔法の液体「接点復活剤」の出番
ここからは慎重に行います。
- 周囲をガードする スイッチ以外の基盤に液がかかると故障の原因になります。スイッチの周りをティッシュペーパー等で囲い、液が飛び散らないように養生します。
- 隙間から注入 マイクロスイッチの小さな突起(クリックする部分)の隙間を狙い、接点復活剤を「シュッ」と短く1プッシュだけ注入します。大量にかける必要はありません。ほんの少しで十分です。

連打して馴染ませる
液を入れたら、即座にスイッチの突起を指で連打します。
- 「カチカチカチカチ…!」と10回連打
- もう一度軽くプッシュ
- また10回連打
これを5セットほど繰り返します。 こうすることで、スイッチ内部の金属接点についた酸化膜やカーボン汚れが落ち、通電が良くなります。

★ポイント: せっかく分解したので、不具合が出ていない「右クリック」のスイッチも同様に処置しておきましょう。予防保全になります。
手順3:元通りに組み立てる
満足いくまで連打したら、組み立て作業に入ります。
- カバーを戻す 電池ボックスから伸びている細いケーブルを挟まないように注意しながら、上部カバーをはめ込みます。
- ネジを締める 外した5本のネジを締めます。電池ボックス内の隠しネジも忘れずに。
- ゴム足を貼る 剥がしておいたゴム足を元の位置に貼り直します。
- ボールと電池を入れる 最後にボールと電池をセットして完了です!
結果:新品同様のクリック感が復活!
PCに接続して動作確認をしてみます。ドキドキの瞬間です。
左クリックをポチッ。 ……しっかりと「1回」だけクリックされました!
フォルダを開いたり、テキストを選択したりしてみましたが、あのイライラした勝手なダブルクリックは完全に消滅。 クリック感も心なしかカチッと軽快になった気がします。
まとめ:数百円で直るなら試す価値あり
今回の修理にかかった時間はわずか15分程度。 かかった費用も、手持ちの道具を使ったので実質0円(道具を買っても千円〜二千円程度)です。これで1万円近い出費を回避できたのは大きな成果でした。
トラックボールやマウスのチャタリングは、構造上どうしても避けられない経年劣化です。 しかし、捨てる前に「接点復活剤」を一吹きするだけで、まだまだ現役で使える可能性があります。
ドライバーセットと接点復活剤は、一家に一セットあると家電のちょっとした不調(リモコンの効きが悪い、ゲームコントローラーのドリフトなど)にも使えて損はありません。
「もう買い換えるしかないか…」と諦める前に、ぜひ一度DIY修理にチャレンジしてみてはいかがでしょうか?愛着のある道具が復活すると、とても嬉しいですよ!



















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